彼女からは、おいちゃんと呼ばれています

ウェブ技術や日々考えたことなどを綴っていきます

短時間勤務をはじめて 1年半たった

ペパボでは 小学3年生までの子どもがいる場合とか、一定の条件で短時間勤務をすることができるので、それを利用して昨年(2016年)の 3月から 1年半、短時間勤務をしている(通常 8時間勤務のところを 2時間減らして 6時間勤務にしている)

実際やってみてどうだったのか、ひとつの事例として参考になればと思い、書き留めておく。

環境(チームの規模等)

前提として、僕がどんな環境で働いているかというと、チームの人数やメンバーは変動があるけれど、およそチームの規模としては、

  • エンジニア 6人
  • デザイナー 1人
  • プロダクトマネージャー 1人

という感じ。1スプリント = 1週間でアジャイル開発している。

短時間勤務にしたかった理由

なぜ短時間勤務にしたかというと、手続上、何か理由がないと短時間勤務できないというわけではないんだけど、子どもの保育園の送迎というのが表向きの理由。

もう少しいうと、5歳の息子と 3歳の娘がいて、下の娘が希望の認可保育園に入れなくて(日本〇ね)、兄妹が別々の保育園になってしまって。妻も別の企業で短時間勤務しているんだけど、それぞれ子どもを一人ずつお迎えに行っている。

本当の理由

ただ本当のところは「家族と一緒に夕食を食べられないのが寂しかった」というのが一番大きいかもしれない。

単一障害点をなくす

あとは夫婦のどちらかだけ短時間勤務にしてその人のみが子どもの送り迎え可能にするよりも二人とも短時間勤務にしたほうが何かと融通が利くなとか(頭の中に浮かんでいたことをそのまま文字にすると「単一障害点をなくせる」と考えていた)

日本の風潮に対して

さらにいうと、日本では夫婦のどちらかが短時間勤務にしなければいけないとしたら、必然的に女性のほう、という風潮があると感じていて、そういうのが気に入らないという気持ちも多少あった。

短時間勤務にしても大丈夫だと判断した理由

自分が短時間勤務にしても大丈夫だと判断した理由も書いておく。短時間勤務を開始した当時、エンジニア 6人のうち、4人が若手、2人がベテランという構成で、僕はベテランのほうに含まれていた。

で、ベテラン勢は当然「自分たちしかできなかったことを、他の人もできるようにする」という役割も求められているんだけど、若手のうち 2人が自分の開発タスクをやるだけではなく、チームを引っ張っていくロールもできるようになったので、機能開発なりをガンガン進めて行く役割は、もうベテランなしで、若手4人だけで十分と判断できた。

そのため、自分が短時間勤務にしても、例えば僕へ相談したいときにつかまらないことが多々あったりして、それボトルネックになってチームの勢いが落ちる、というようなことはないだろうと判断した。

なお、ベテラン勢は何をやっていたかというと「重要度は高いが緊急度は低い」タスクに注力できるようになっていた。

短時間勤務にして良かったこと

短時間勤務にして実際どうだったか。

家族との時間 / 単一障害点

まず当初の思惑通り、家族で一緒に夕食を食べられるようになった。そして夫婦ともに短時間勤務なので、急な都合によりどちらから保育園お迎えに行けなくなったケースへの対応がスムーズにできるようになった。

インプットの量が増えた

また詳しくは「Pivotal Tracker でインプットの質と量を保てた一年だった」に書いたけれど、業務時間外のインプットの量が増えた(アウトプットも)

ここ大事なところなので少し掘り下げると、単に業務時間が短くなったから業務時間外の時間が長くなり、その分を学習に回せるようになったということではない。もちろんそういう絶対的な時間の量的な要因もあるけれど、意識面のほうも大きくて。

つまり(これはチームのメンバーに直接確認したわけではなく僕の想像だけれど)8時間勤務から 6時間勤務にしたからといって、自分に期待されるバリューが 8分の6 になるわけではない。また(周りがどう期待しているかとは別に)自分としても成果を 8分の6 にしたいわけではない。

そうすると必然的にどうやったら短い時間で大きなバリューを出せるかを考えざるを得なくなる。そういう意識(悪くいうとプレッシャー)がインプットの量を増加させた要因として大きいと思う。

(もちろん、短時間勤務をする皆がこのようなケースに当てはまるとは思わない。僕は少数派かもしれない)

短時間勤務にすることのデメリット

一方でデメリットもあった。

収入が減った

まず一番分かりやすいこととして収入が減った。月あたり10万円くらい減った。勤務日数が月に20日あるとして、1日5千円減るとして。毎日5千円の夕食を食べるのと同じなんだなー、贅沢だなーと考えたこともある。

毎日5千円の夕食って考えると、ウッてなるけど、まあ要は何を一番重視するかという話で、うちの家族は「家族がみんな笑って過ごせること」と何よりも重視するので、今回はそれを達成するためにお金よりも時間のほうに倒すべきという判断をしたということ。

これが例えばダブルインカムではなくて、かつ収入も生活するのにギリギリという状態だったら、収入を月に10万減らすことにより、経済的にも精神的に貧しくなって家族が笑って過ごせることに反するかもしれないので、そういう状況だったら違う判断をしたかもしれない。

みなし残業制度

収入に関して補足的な話をすると(おそらく他でもそうだと思うけど)短時間勤務だとみなし残業代は出ない。それまであまり深く考えていなかったけど、まあ不利になるケースはあるわなと思った。

ペパボの場合は下記のツイートにあるような地獄ではないけれど、まあいろいろと問題も含んでそうな制度なので、そのうちこの制度は淘汰されていくんじゃないかなと思う。

期待される成果が小さくなるわけではない

前述の繰り返しになるが、短時間勤務にすると、収入や期待される業務時間の量は小さくなるが、それによって期待されるバリューが小さくなるわけではないと感じた(これも繰り返しだけど、僕が感じただけで、周りに確認したわけではない)

周りからの期待もそうだし、自分から自分に対する期待もそうだった。にもかかわらず、短時間勤務をはじめて 2か月〜半年くらいは思ったようにバリューが出せなくて、あれ、こんなはずじゃあなかったのになと感じていた記憶がある。

前述のように業務時間外のインプットは短時間勤務をはじめた直後から明確に増えたが、それが仕事のバリューに繋がるまでは感覚として半年くらいかかったのではないかと思う。

ミーティング入れにくい問題

と、ここまで書いて、自分目線ばかりだなと思って、チームのメンバーとランチに行ったときに訊いてみた。「短時間勤務についてブログ書いているから、僕が短時間勤務をしていることで困ったことをひとつ以上挙げてくれ。僕のためと思って、頼む」と。

そのときに「ミーティングを入れたいときに、部屋を探したらなかなか空いていなくて、空いている時間帯を見つけても、それはおいちゃんが帰っている時間帯だった、ということが何回かあった」と(複数人から)言われた。

あと「相談したいことがあって、だけど、もうおいちゃんは帰っていて、ということが何回かあった」とか(だけど、まあ次の日に相談すればいいし、実質あまり困らなかった、と付け加えられた)

(もちろん本人が目の前なので言いづらいとかあって、本当は他にも問題があった可能性ももちろんある)

一番言いたかったこと

さて、長々と書いたけれど、一番言いたかったことをまとめる。

僕は短時間勤務をはじめるにあたって、収入が減る不安よりも、自分の出せるバリューが減ってしまう不安のほうが大きかった。というのも、収入はどのくらい減るか試算できたので、天秤にかけやすかったが、バリューについてはどうなるか正直予想が難しかったため。

短期的には出せるバリューは 8分の6 よりもさらに減った

これについては、もうやってみて、それから考えるしかないなと判断した。で実際どうだったかというと、僕個人が出せたバリューは少なくとも短期的には減ったと思う。8分の6 に減ったのではなく、もっと減ったと思う。

なぜかというと一日のうち一定の時間はコミュニケーションにあてられるので、それが仮に 2時間だとすると、短時間勤務にする前は 6時間(8 - 2 = 6)は自分が手を動かせる時間にあてられていたのが、短時間勤務にして 4時間(6 - 2 = 4)になってしまったから。

長期的にみると出せるバリューは上がった

しかし、短時間勤務をはじめて 1年半たったいまはどう感じているかというと、短時間勤務をはじめる前よりも明らかに、仕事に幅と高さが出せるようになったと感じている。業務時間の量は減ったが、出せるバリューは上がった(と自分では思っている)

それは技術力の向上に依っていて、かつその技術力の向上は前述のように業務時間外のインプットの量が増えたことに大きく依っているので、ある意味、短時間勤務がバリュー向上に寄与したといってよいと思う。

正直、このあたりの話は、本当にひとつの事例として過ぎず、他の人にも当てはまる保証など何もないにも関わらず、他の短時間勤務をしている人たちに余計なプレッシャーを与えてしまうのでないかと懸念して、書くべきか迷った。

が、それでも書いた意図としては、僕と同じように、バリューが出せるか不安で短時間勤務をためらっている人に対して「こんな事例もあったよ。やってみて、うまくいかなかったら戻すという選択肢もあるよ」というメッセージを伝えたかったから。

今回、短時間勤務をテーマにしたが、残業をなくしたい問題についても共通している部分があると思う。どなたかの参考になればと願う。

謝辞

最後に。短時間勤務をはじめるにあたって、下記の本の影響を受けた。

今までになかった制度を最初に使うのは勇気がいる。ここでリーダーの出番だ。リーダーが使えば、メンバーも安心して使えるようになる。制度の利用を促すときに、リーダーが先頭に立って率先垂範するのは有効だ。

ペパボでは男性が短時間勤務の制度を利用するのは初、ということを聞いたとき、この本のことを思い出して、だったらなおさら自分が利用する必要があるなと思った。

そして、後輩や(素敵な制度をつくってくれた)バックオフィスの人たちに、実際に利用してみてどうだったか、フィードバックを伝える必要があるなと考えた。

そうした意味で背中を押してくださった青野さんにお礼を伝えたい。ありがとうございました!